休職を考えたとき、最も不安に感じるのが「お金」の問題ではないでしょうか。給料が出なくなったら生活はどうなるのか、貯金だけで持つのかと、考えれば考えるほど不安が大きくなります。
しかし、日本には休職中の生活を支える「傷病手当金」という公的制度があります。この制度を正しく理解しておくだけで、経済面の不安はかなり軽減されます。
この記事では、傷病手当金の仕組み・受給条件・申請方法から、その他の活用できる制度まで、休職中のお金の不安を解消するための情報をまとめています。知っているかどうかで、休職中の安心感はまったく変わります。

傷病手当金とは
傷病手当金は、病気やけがで働けないとき、健康保険から支給される手当です。うつ病、適応障害、自律神経失調症など、メンタルの疾患でも受給が可能です。
「メンタルの病気でもらえるの?」と驚く方もいますが、もちろんもらえます。むしろ、記事執筆時点では傷病手当金の申請理由として精神疾患が最も多いカテゴリのひとつとなっています。「自分なんかがもらっていいのかな」と遠慮する必要はまったくありません。
傷病手当金は労働者の正当な権利です。制度を利用することは恥ずかしいことではなく、賢い選択です。
受給条件
傷病手当金を受け取るには、以下の5つの条件をすべて満たす必要があります。
- 健康保険に加入していること(国民健康保険は対象外)
- 業務外の病気・けがであること
- 療養のため仕事ができない状態であること
- 連続3日間の待期期間を経過していること
- 給与の支払いがないこと(一部支給の場合は差額が出る)
受給条件の詳しい解説
「健康保険に加入していること」について
会社員で社会保険に入っていれば対象です。パートやアルバイトでも、社会保険に加入していればOK。ただし、国民健康保険(自営業やフリーランスの方)は対象外です。
「業務外の病気であること」について
「業務外」とありますが、パワハラや過重労働が原因のうつ病でも、通常は傷病手当金の対象になります。「業務上の疾病」として労災認定されるケースは手続きが異なりますが、まずは傷病手当金を申請するのが一般的です。
「連続3日間の待期期間」について
有給休暇を使った3日間でもOKです。土日祝も含めてカウントされます。たとえば金曜から休み始めたなら、金・土・日で3日間の待期期間が完成し、月曜(4日目)から支給対象になります。
支給額
直近12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
ざっくり言うと、給料の約2/3が支給されます。
具体的な支給額の目安
| 月給(額面) | 傷病手当金(月額目安) |
|---|---|
| 20万円 | 約13.3万円 |
| 25万円 | 約16.7万円 |
| 30万円 | 約20万円 |
| 35万円 | 約23.3万円 |
| 40万円 | 約26.7万円 |
なお、傷病手当金には税金がかかりません(非課税)。所得税・住民税が引かれないので、手取りベースで考えると「給与の2/3」以上の実感があります。
支給期間
最長1年6ヶ月(通算)。記事執筆時点では、支給開始日から通算して1年6ヶ月間が上限です。
以前は「支給開始日から1年6ヶ月」で、途中出勤した日もカウントされていましたが、制度改正により「通算して1年6ヶ月」に変わりました。つまり、途中で出勤した期間は除外されるので、実質的な受給可能期間が伸びています。
「通算して1年6ヶ月」なので、途中で復帰して再び休職した場合でも、残りの期間から受給を再開できます。焦って復帰して再休職しても、受給権が消えるわけではありません。
申請方法
- 会社の人事部に休職と傷病手当金の申請を伝える
- 主治医に「傷病手当金支給申請書」の意見欄を記入してもらう
- 会社に「事業主証明欄」を記入してもらう
- 健康保険組合(または協会けんぽ)に提出
- 審査後、指定口座に振り込まれる(申請から1〜2ヶ月程度)
申請のポイント
- 申請は月ごとに行う:毎月分をまとめて申請するのが一般的です
- 初回の振り込みまで時間がかかる:申請から1〜2ヶ月かかることがあるので、その間の生活費は貯金か家族の支援で賄う必要があります
- 申請書は会社からもらう:人事部に「傷病手当金の申請書をください」と言えばもらえます。または、協会けんぽのWebサイトからダウンロードも可能です
仕事のストレスが限界に達しているときの症状チェックは以下の記事で確認できます。



会社が非協力的な場合
稀に、会社が傷病手当金の手続きに非協力的なケースがあります。その場合は、直接、健康保険組合や協会けんぽに連絡してください。会社を通さずに申請する方法を教えてもらえます。
退職後も傷病手当金を受給できる条件
休職中に退職した場合でも、以下の条件を満たせば傷病手当金の受給を継続できます。
- 退職日までに1年以上健康保険に加入していた
- 退職日に傷病手当金を受けていた(または受給要件を満たしていた)
- 退職日に出勤していない(退職日に出勤すると受給資格を失う場合がある)
退職日には出勤しないことが非常に重要です。「最後の挨拶に行こう」と思って出勤してしまうと、受給資格に影響する可能性があります。退職の挨拶はメールや手紙で済ませましょう。
その他の活用できる制度
自立支援医療制度
通院費の自己負担が3割から1割に軽減される制度です。心療内科への通院費を大幅に節約できます。市区町村の窓口で申請できます。うつ病で仕事に行けないときの選択肢は以下の記事で詳しく解説しています。



月に2〜3回通院する場合、年間で数万円の節約になります。申請には主治医の診断書が必要ですが、一度手続きすれば1年間有効(更新可能)です。休職中は出費を抑えたいので、ぜひ活用してください。
住民税の減免
収入が大幅に減った場合、住民税の減免措置を受けられることがあります。市区町村に相談してみましょう。
国民年金の免除
退職して収入がなくなった場合、国民年金保険料の免除を申請できます。将来の年金額には影響しますが、未払いよりも免除のほうが有利です。
高額療養費制度
月の医療費が一定額を超えた場合、超過分が返ってくる制度です。心療内科の通院費だけでなく、他の医療費もまとめて対象になります。
生活福祉資金貸付制度
一時的に生活費が足りない場合、社会福祉協議会から低金利で借りられる制度です。無利子のものもあります。
休職中のお金の管理のコツ
固定費を見直す
- サブスクリプション:使っていないものは解約
- スマホ料金:格安SIMへの乗り換えを検討
- 保険:過剰な民間保険は見直し
- ジム会員:一時休止できないか確認
支出の優先順位をつける
- 最優先:家賃、光熱費、食費、通院費
- 優先:通信費、最低限の交通費
- 後回し:娯楽費、交際費
「お金がない」と焦ると回復が遅れます。使える制度を最大限活用して、経済的な不安を少しでも和らげてください。
よくある質問(Q&A)
Q. 傷病手当金だけで生活できますか?
A. 給与の約2/3(非課税)なので、一人暮らしの場合はギリギリかもしれません。固定費の見直しと、自立支援医療や住民税の減免を活用すれば、なんとかなるケースが多いです。それでも厳しい場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度も検討してください。
Q. 傷病手当金をもらいながらアルバイトはできますか?
A. 原則としてできません。傷病手当金は「働けない状態」であることが支給要件なので、アルバイトをすると「働ける」と判断され、支給が停止される可能性があります。
Q. 傷病手当金の申請を会社に言いにくいのですが…
A. 傷病手当金は労働者の権利です。遠慮する必要はありません。「傷病手当金を申請したいのですが、手続きを教えてください」とメールで人事部に連絡すればOKです。会社も日常的に対応しているので、特別なことではありません。


参考:厚生労働省 医療保険制度、厚生労働省「こころの耳」、厚生労働省 高額療養費制度
まとめ:お金の不安を解消して、治療に専念しよう
- 傷病手当金で給料の約2/3が最長1年6ヶ月支給される
- メンタル疾患でも受給可能
- 傷病手当金は非課税(手取り感覚は2/3以上)
- 退職後も条件を満たせば受給を継続できる
- 自立支援医療で通院費も軽減できる
- 申請は会社の人事部と主治医の協力で進める
- 固定費の見直しで支出を減らす
経済的な不安があると治療に集中できません。使える制度はどんどん活用しましょう。制度を利用することは恥ずかしいことではなく、自分の生活と健康を守るための賢い選択です。一人で抱え込まず、まずは主治医や人事部に相談してみてください。



