出勤途中の電車で急に心臓がバクバクして止まらなくなる。プレゼンの直前に手が震える。そんな経験はありませんか。仕事中の動悸や緊張は、体が発しているストレスのサインかもしれません。
仕事のストレスで動悸が起きるのは決して珍しいことではありません。産業カウンセラーとして相談を受けてきた中でも「動悸がする」「緊張が止まらない」という訴えはとても多い症状のひとつです。
この記事では、動悸の原因から今すぐできる対処法、受診の目安まで詳しく解説します。「よくあること」だからこそ放置してしまいがちですが、それが一番怖いのです。早めに対処していきましょう。

仕事中の動悸の原因
ストレスによる自律神経の乱れ
最も多い原因です。ストレスで交感神経が過剰に働き、心拍数が上がります。本来はリラックスしているときに副交感神経が働いて心拍を落ち着かせますが、慢性的なストレス状態だとこのバランスが崩れてしまいます。
不安障害・パニック障害
特定の状況(会議、プレゼン、上司との面談など)で急に動悸が起きる場合、不安障害やパニック障害の可能性があります。これは脳の機能の問題なので、気合いで治るものではありません。
カフェインの摂りすぎ
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインは心拍を速めます。「仕事中にコーヒーを5杯以上飲んでいる」という方は、それだけで動悸の原因になっている可能性があります。
睡眠不足
睡眠不足は自律神経を乱します。慢性的な寝不足で交感神経が常に優位な状態が続くと、日中の動悸が起きやすくなります。
心臓の病気
不整脈や心臓弁膜症など、心臓自体に原因がある場合もあります。まずは内科(循環器内科)で心臓に異常がないか確認することが大切です。
動悸と緊張の違い
| 動悸 | 緊張 | |
|---|---|---|
| 症状 | 心臓がドキドキ、バクバクする | 体がこわばる、手が震える |
| 原因 | 自律神経の乱れ、心臓疾患 | 精神的プレッシャー |
| 持続時間 | 数分〜数時間 | 場面が終わると落ち着く |
| 注意点 | 頻繁なら受診が必要 | 日常生活に支障があれば受診 |
動悸と緊張は一緒に起きることも多いです。「プレゼンの前に心臓がバクバクして手が震える」のは、動悸と緊張の両方が同時に起きている状態です。
動悸が起きやすい場面
- 出勤途中(電車の中、会社の最寄り駅に着いたとき)
- 朝礼や会議の前
- 上司に呼ばれたとき
- プレゼンや発表の直前
- 電話が鳴ったとき
- ミスを指摘されたとき
- 締め切り直前
- 日曜の夜(翌日の出勤を考えると)
特定の場面で繰り返し動悸が起きる場合は、その状況がトリガーになっている可能性が高いです。パターンを把握することが対策の第一歩になります。
今すぐできる対処法
1. 腹式呼吸(4-7-8呼吸法)
4秒吸って、7秒止めて、8秒かけてゆっくり吐きます。吐く時間を長くすることで副交感神経が優位になり、心拍数が下がります。
動悸が起きたらすぐにこの呼吸を始めてください。3〜4回繰り返すだけで、心臓のバクバクが落ち着いてくることが多いです。相談者の方にも最初にお伝えする対処法です。
2. 冷たい水を飲む
冷水刺激で迷走神経が活性化し、心拍を落ち着かせる効果があります。ペットボトルの水を常にデスクに置いておくとよいでしょう。
3. その場を離れる
トイレや外に出て、刺激の少ない場所で落ち着きましょう。「少し体調が悪いので席を外します」と一言伝えれば大丈夫です。無理して席にいる必要はありません。
4. 手のツボを押す
「合谷(ごうこく)」というツボ(親指と人差し指の間のくぼみ)を反対の手の親指でギュッと押すと、リラックス効果があります。デスクに座りながらでもできるのでおすすめです。
5. カフェインを控える
コーヒー、エナジードリンクは動悸を悪化させます。午後のカフェインは特に控えましょう。代わりに水やハーブティーを飲むようにすると、意外と動悸の頻度が減ることがあります。

6. 「大丈夫」と自分に声をかける
動悸が起きると「このまま倒れるんじゃ…」と不安になりますが、ストレス性の動悸で倒れることはほぼありません。「これはストレス反応。大丈夫。すぐ治まる」と自分に言い聞かせてください。
職場での予防策
ストレスの原因を特定する
動悸が起きるタイミングを1週間記録してみましょう。「月曜の朝」「上司との面談後」「締め切り前日」など、パターンが見えてくると対策が立てやすくなります。
十分な睡眠を取る
睡眠不足は動悸の大敵です。7〜8時間の睡眠を目標に、寝室の環境を整えましょう。
適度な運動を取り入れる
ウォーキングやヨガなどの軽い有酸素運動は、自律神経のバランスを整える効果があります。週2〜3回、30分程度で十分です。
リラックスの時間を確保する
帰宅後や休日に、意識的にリラックスする時間を作りましょう。入浴、ストレッチ、好きな音楽を聴く、散歩する…何でもよいので、心身が休まる時間を確保してください。
受診の目安
以下のいずれかに当てはまる場合は、医療機関を受診してください。
- 動悸が週に複数回起きる
- 胸の痛みを伴う
- 意識が遠のく感覚がある
- 動悸と一緒に強い不安感がある
- 動悸で仕事に集中できない
- 動悸のことが頭から離れない
- 動悸が怖くて出社できない
何科を受診すべきか
- まず循環器内科:心臓の異常がないか確認(心電図、エコー検査など)
- 異常がなければ心療内科:ストレス性の動悸として治療
心療内科では、必要に応じて抗不安薬や漢方薬が処方されることがあります。薬に抵抗がある方もいらっしゃいますが、適切に使えば動悸を効果的に抑えることができます。
体験談:動悸を克服した方の声
Sさん(26歳・営業職)
「毎朝の朝礼で心臓がバクバクして、声が震えるのが本当につらかったです。心療内科を受診したら、軽い抗不安薬を処方してもらえて、朝礼前に飲むと嘘みたいに楽になりました。」
Tさん(33歳・SE)
「動悸が怖くて電車に乗れなくなり、通勤ができなくなりました。上司に相談してリモートワークに切り替えてもらい、並行して心療内科に通ったら3ヶ月で改善。今は電車にも乗れています。」
よくある質問(Q&A)
Q. 動悸は自分で治せますか?
軽度のものは、呼吸法やカフェイン制限、十分な睡眠で改善することがあります。ただし、頻繁に起きる場合や日常生活に支障がある場合は、医療機関の受診を強くおすすめします。
Q. 動悸で会社を休んでもいいですか?
もちろんです。動悸は体の不調です。「動悸くらいで…」と思わず、つらいなら休んでください。特に動悸が強くて仕事に集中できない場合は、無理して出社するより休んだほうがよいです。
Q. 動悸があることを職場に伝えるべきですか?
直属の上司には伝えておくことをおすすめします。「自律神経の不調で、急に体調が悪くなることがある」程度の説明で構いません。伝えておくと、症状が出たときに席を外しやすくなります。

まとめ:動悸は体からの警告サインです
- ストレスによる自律神経の乱れが主な原因
- 腹式呼吸・冷水・場所移動で応急処置
- カフェインを控える、十分な睡眠を取る
- まず循環器内科で心臓を確認→異常なしなら心療内科
- 動悸の記録をつけてトリガーを特定する
- 根本はストレスの原因を解決すること
- 薬による治療も有効な選択肢
一人で抱え込まないでください。動悸を「気のせい」にせず、体が「助けて」と言っているサインに耳を傾けてあげましょう。早めに対処することが、あなた自身を守る一番の方法です。
相談先:
- 厚生労働省「こころの耳」:働く人のメンタルヘルス相談
- 厚生労働省 メンタルヘルス対策
- あかるい職場応援団(厚生労働省)


